『ニホンカモシカのパール』(たくさんのふしぎ2025,11号)
前川貴行著 福音館書店
この本は、動物写真家である著者が下北半島に棲むニホンカモシカを
ずっと追い続けて写真を撮り続けた写真集でドキュメンタリー風に描
かれている。その時々の語りは山あいでカモシカを撮り続けた苦労がよ
く出ている。最初に見たカモシカを[パール]と名付けその個体を追い続
けた様子か写真に収められている。そしてそ「パール」の4どの4度の
出産にまで写真を撮り続けた。何と言っても険しい山あいでニホンカモ
シカを追い求めるのは並大抵の苦労では写真に撮れない。そこを著者は
執拗に追いかけた。ニホンカモシカはウシ科であるが比較的おとなしく
山あいにはよく顔を出す。熊みたいに人間に襲い掛かってくることはま
ずない。私も雪解けの後の金沢市郊外山間部でニホンカモシカにしばし
ば出くわしたことがある。その時もちらっとこちらを見ては静かに森林
内を歩いていた。
物語りは、著者が切り立った断崖を歩いている時にじっと木の間から
覗いている一匹のカモシカから話は始まる。最初に見たニホンカモシカに
「パール」と名付けて以後追い求めて写真に収めいったストーリーがメ
インになっている。木の間からじっとこちらをのぞいているカモシカの
顔がいい。雪の季節のカモシカの姿もアップで映し出される。文章には、
カモシカについての解説を交えながら多くの写真がちりばめられている。
カモシカの顔や角の形は微妙に違っているという。カモシカの顔には目
の下に二つの眼下腺という甘酸っぱい粘液を出す窪みがあるのが特徴で
ある。頭にある二本の角は年毎には生え変わらず年々大きくなっていく。
ずっとその個体を追うには以上のような個体識別がいる。カモシカの顔
が大きくアップした写真もある。「パール」は何度も出産したが子ども
は育たなかった。「パール」を見つけて9年後、その「パール」が子ど
もと共にいることを見つけた著者の感動は計り知れない。
2025年11月 810円
『空飛ぶ微生物』 牧輝弥著 ブルーバックス 講談社
「微生物」という言葉は今までに聞きなれた言葉である。最近、蛍光
顕微鏡などを使ってくわしい観測が出来るようになって微生物の研究が
盛んになってきた。この本は微生物、とりわけ大気微生物の研究実態を
くわしく取り上げている。
空にはなんど「海、山、他や畑、砂漠、人体などから舞い上がり、空を
飛ぶようになった微生物」がたくさん漂っているという。そう言われれば
そうだろう。昔から「瘴気」と言って結核やペストと言った細菌は今まで
にも恐れられてきた。それ以外にも微生物の中にはウィルスや花粉もある。
それらの微生物が各地に分散され地球のあらゆるところに拡散されている
ことがわかってきた。南極大陸の氷の下にも微生物は閉じ込められている
という。今まで空気が清んで気持ちいいと思っていた森林帯にも多種多様
な微生物がいるという。カビやキノコの胞子、地衣類も胞子を飛ばし、森
林の葉っぱについていた感染菌が葉っぱから飛ばされ拡散されていること
もあるという。さらに、海洋からも微生物も塩化ナトリウムなども飛来し
ているという。さらに海水には生物が死んだ細胞残渣なども含まれている
という。さらに陸上に目を広げれば畜産場や下水処理場も大気微生物の拡
散原になっているという。目を広げると砂漠から出る砂塵黄砂にもいっぱ
い微生物のいることは予想できる。このように大気中の微生物の実態もだ
いぶわかってきた。深刻になるのは、こうした微生物が地球を周回してい
て上空、宇宙にまで拡散しているという。大気粒子の80%は有機物という。
そう言われるとそうかと思われるが、その細かい微生物を顕微鏡で捉えて
いることがすごい。こうなれば無視できない。まだまだ研究途中の感があ
るが、これからもますます「空飛ぶ微生物」の研究に期待したい。
2025年9月 1,000円
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